慰謝料請求において内容証明郵便が届いたときの注意点

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弁護士 金井啓
金井啓
一般の方々に、わかりやすく法律の知識をお届けしております。
難しい法律用語を、法律を知らない人でも分かるような記事の作成を心がけています。
不倫慰謝料に関する様々な悩みを持つ方々のために、当ホームページは有益な情報を提供いたします。

内容証明郵便を使って慰謝料の請求をされることがあります。単なる文書の送付や口頭での請求とは違い、請求内容や請求の記録が確実に残せるという点が大きな特徴です。

内容証明郵便が届いたということはそれだけ本気で請求をしているということですので、受け取った方も相応の対応を考えなくてはなりません。
ここに挙げる注意点を意識して、適切な対処法を検討するようにしましょう。

「内容証明郵便」とは、一般書留郵便物の内容を証明するサービスのことです。

内容証明郵便を使うことで、どんな文書を、いつ、誰から誰に差し出したのか、これらの情報を証明することが可能になります。
そのため重要な書類など、郵便物の内容を記録として残したいシーンにおいて利用することがあります。

ただし、証明できるのは「記載された内容の文書が存在していること」であって、「記載された内容が正しいこと」を証明するわけではありません。
この点には注意が必要です。

重要な請求をするときによく利用される

内容証明郵便は、不倫を理由とする慰謝料請求のような、重要な局面でよく利用されています。

争いとは無縁の単なる手紙を送るようなシチュエーションで通常は内容証明郵便を使うことはなく、後々文書の送付に関して争いが起こり得る場面で使うこととなります。

そこで不倫や浮気問題だけでなく、次のような状況で利用する例が挙げられます。

  • 債権の回収
    債権者が取引相手である債務者に対し債務の弁済を求めるときに内容証明郵便を用いることがある。請求の意思表示をしたという事実を証明し、その後の法的手段に向けての備えとする。
  • 契約の解除
    契約相手と揉めそうな場合において、契約解除を求めるときに内容証明郵便を用いることがある。
  • 損害賠償の請求
    交通事故、その他不法な行為によって損害を受けた方が、加害者に対して損害賠償を求める請求をする場面で内容証明郵便が用いられる。慰謝料の請求も損害賠償請求の1種。
  • 退去の催告
    賃貸物件のオーナーが、契約に従わないなどの問題を抱える賃借人に対して退去を求めるとき、その催告を求める文書を内容証明郵便で送ることがある。

内容証明郵便を使った請求の効力

内容証明郵便を使って請求をすることの意味、効力について説明していきます。

上述の通り請求があったことが証明され、その後しらを切ることはできなくなりますし、時効消滅による支払拒絶も難しくなります。
慰謝料の支払いを求められる側としては、LINE上でのメッセージや電話で請求されたときより一層今後の対応に慎重になる必要があるでしょう。

請求の事実と内容について言い逃れができない

法的な紛争については「言った」「言っていない」が争点となることもよくあります。
この場合、一方が「言った」ことについての証拠を提示して客観的にその事実関係を立証しないといけません。

慰謝料の請求においても「請求はした」「請求はされていない」と双方の意見が食い違う場面が出てくることもあります。

そして請求を受けた側が請求の事実について認識していても、証拠を相手方が持っていなければ言い逃れができてしまうのです。
しかし、内容証明郵便を使って請求をされたときは内容証明が付されており、請求を行ったことの事実については容易に証明ができるようになります。よって、請求を受けたという事実、そしてその内容について言い逃れをすることができなくなります。

消滅時効期間の進行が止まる

仮に慰謝料請求権が法的に認められるとしても、その権利は将来に渡り永久に存続するわけではありません。
法律上、消滅時効にかかるため、一定期間その権利を行使しなければ消滅してしまいます。

不倫を原因とする慰謝料請求は、広くは「不法行為を原因とする損害賠償請求」を意味しますので、次の規定に従います。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

引用:e-Gov法令検索 民法第724条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

つまり、不倫があったことを認識したときから3年間、または不倫があってから20年間が経過すると、請求権は時効により消滅するということです。※自身の配偶者以外への請求の場合は、請求相手となる加害者についても認識してから3年の消滅時効期間が進行を始める。

不倫がばれても3年間が経過すれば時効消滅を主張できます。
ただし支払いについての請求や催告を受けたときは、6ヶ月間、消滅時効の完成が妨げられます。

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

引用:e-Gov法令検索 民法第150条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

もし請求が口頭によるものであったとき、「請求はされておらず、消滅時効は完成したから支払いを拒絶する」と主張すると、相手方はこれを覆すことは難しいでしょう。本当に請求があったことを示せないからです。
しかし内容証明郵便による請求があるときはこのような言い分は通らなくなります。

心理的なプレッシャーがかかる

内容証明郵便による請求には、請求を受けた者にプレッシャーがかかるという事実上の効果も伴います。

内容証明郵便を使って請求をするということは、慰謝料の回収に向けて本格的に動き出しているということも意味します。
これまで支払いをはぐらかしてきた方も、内容証明郵便を受けた後は真剣に向き合う必要があります。

支払い義務が生じるわけではない

注意しておきたいのは「内容証明郵便を使った請求を受けても、慰謝料の支払い義務が確定するわけではない」ということです。

きちんとした文書が届くことでプレッシャーを感じることもあると思いますが、これは裁判所から届く審判書や判決書とは性質がまったく異なります。

「支払いなさい」と記載されていても、その時点で法的に支払い義務が生じるのではなく、厳密には「支払いに応じてほしい」という交渉の意味合いを持ちます。

そこでもし不倫があったことについてはすでに話し合って認めている場合であっても、「〇〇万円を支払え」「〇〇日以内に支払え」との記載に従う必要はありません。
「〇〇日以内に回答をすること」といった記載についても無理に従う必要はありません。
数日しか猶予が設けられていなかったとしても、落ち着いて弁護士に相談を行うようにしましょう。

内容証明郵便で請求を受けたときの注意点

内容証明郵便で慰謝料の請求を受けたときでも、すぐに支払わないことが大事です。
すぐに記載通りに従うのではなく、内容を精査し、妥当性を確認しましょう。ただし放置をすべきではありません。

すぐに支払わない

突然文書で請求を受けることで焦ってしまうこともあるでしょう。
「すぐに支払わないと大変なことになるかも」などと考え、支払いに応じてしまうケースもあります。

しかし上述の通り裁判によって支払い義務が確定しているわけではありませんし、たとえ弁護士からの文書であったとしても従う必要はありません。

仮に内容に問題がなく支払いに応じるとしても、合意書を作成しておくことが推奨されます。

支払条件等を事細かに記載し、義務をすべて履行したことの証明をできるようにしておくのです。そうでなければ、後日何かと理由を付けて再度の請求を受けるおそれがあります。

記載内容が正しいかどうかをチェックする

届いた文書の記載内容を確認し、事実関係に誤りがないかを確認しておきましょう。事実に誤りが含まれていることをスルーして対応を進めてしまうことのないようにし、違うことは違うと主張していく姿勢が必要です。

特に不貞行為の有無は慰謝料請求における重要な争点です。
肉体関係があったのかなかったのか、ここが慰謝料の支払い義務を左右する大きなポイントとなります。

支払金額が妥当かチェックする

事実関係に誤りがない場合でも、請求金額が妥当でないケースがあります。金額の妥当性を評価するには、過去の裁判例を参照し、その相場から逸脱していないかといった点を見ていきます。

特に弁護士を介さず請求をしてきた場合、裁判上で認められる金額から大幅に外れた金額が記載されていることもあります。
海外だと数千万円以上に及ぶ慰謝料のやり取りが行われることもありますが、日本では数十万円~300万円程度が相場です。

不倫期間や回数、子どもの有無、離婚の有無など、さまざまな事情を考慮して金額は算定されますので、相場の範囲内に収まっているとしても減額交渉ができる余地があるかもしれません。

放置をしない

内容証明郵便で請求を受けても支払いが確定していない以上、放置をすることは違法でもありません。
しかし内容証明郵便を送るほど相手方は本気で臨んできていますので、放置をすることで訴訟に進む可能性が高いです。

紛争を長期化し、余計なコストや労力をかけてしまうことになるかもしれません。
そこで支払わないにしてもスルーするのではなく、具体的な対策を考え始める必要があるでしょう。

弁護士に内容をよく見てもらう

内容証明郵便による不倫慰謝料の請求を受けたとき、すぐに対応せず内容のチェックを行い、具体的な対応を考えることになりますが、一般の方が適切に一つひとつ対処していくのは困難です。

法律の知識、示談交渉や裁判手続に関する経験がなければ、迅速に適切な対応をしていくことはできません。
そのため内容証明郵便を受けた方はまず弁護士に相談することから始めると良いでしょう。

不倫問題についての取り扱い実績に着目して弁護士探しを行い、実際に話をしてみて信頼できると感じることができたのなら、正式に依頼を出します。そして請求内容をチェックしてもらい、内容の妥当性、その後の交渉や手続を代行してもらいます。

横浜クレヨン法律事務所では・・・

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