既婚者と浮気してしまった!?どこからが慰謝料請求されるライン?

既婚者が、配偶者以外の女性あるいは男性と肉体関係を結んだ場合には、不貞行為(不法行為)として離婚原因に該当し、損害賠償責任を負うことはみなさんご存じかと思います。

よく「どこからが浮気?」などの質問があったりしますが、法的には「どこからが浮気(不倫)」なのでしょうか。不倫かどうかの明確な境界線はなく、離婚の際もそこで揉めることも少なくありません。

不倫の定義が曖昧で、具体的にどこからか分かりづらいですよね。キスはしていても性行為をしていない場合には、一切責任を負わないのでしょうか。

この記事では、どこからが不倫のボーダーラインなのかを詳しく解説していきます。
いざ動き出す前に、浮気・不倫の定義をしっかりと理解して、早めに適切な対応をしましょう。

LINEやメールの疑似恋愛

単に友人として異性とLINEやメールのやり取りしていた場合は、当然ですが慰謝料請求はできません。

それでは、友人とは言えない疑似恋愛のようなやり取りをしていた場合はどうでしょうか。実は慰謝料請求が認められた例もあります。

東京地方裁判所平成24年11月28日
「自分の彼女は○○さんで・・・」などの親密な表現を用いてメールをしており、そのメールのやり取り自体を「婚姻生活の平穏を害するようなものというべきである」と判示し、不法行為の成立を認めました。

この件では、肉体関係の存在も争われていましたが、裁判所は肉体関係の存在を認定しませんでした。しかしながら、親密なメール等をしていたことを理由として、不倫相手は慰謝料30万円を支払うこととなりました。

しかしながら、実際に上記のような判断がされるケースは非常に少なく、メールやLINEの内容、連絡の割合などにもよりますが、肉体関係がある場合と比べると、メールやLINEそれ自体に対する慰謝料は非常に認められにくいといえます。

また、たとえ認められたとしても上記の例のように、慰謝料の金額はかなり低い傾向があります。

したがって、メールやLINEでの疑似恋愛のみで慰謝料請求をされることは一般的にはほぼないと言えます。

キスやハグ

それでは「職場の部下とハグをした」「知らない人とキスをした」そんな場合、慰謝料請求は認められるのでしょうか。

「キスをしたら、紛れもなく浮気の行為」と思うのは自然な感情なのですが、法律上では不貞行為に当てはまらず、慰謝料請求が認められることは基本的にはありません。ハグについても同様です。

ただし、過剰なスキンシップについて、不法行為の該当性を認めた裁判例はあります。
宇都宮地判真岡支部令和元年9月18日は、キスやペッティングを行った場合、「不貞に準じた行為」として慰謝料請求の対象となる旨、判事しました。

2人だけで食事デート

異性と2人きり、映画を見に行く・ドライブや食事に行くなどのデートは、キスやハグ同様、法律に定められている不貞行為とはなりません。既婚者と食事に行くことは、何らの権利侵害にも当たりませんので慰謝料を支払う義務はありません。

法律上、不貞行為に該当しないとされる行為は次のようなものです。

  • LINE、メール、電話
  • 2人で会う、食事やデート
  • キスやハグをした

ただし、キスやハグについては、前述した通り、場合によっては「不貞に準じた行為」として、離婚事由や不法行為に該当する可能性はあります。

飲み会の席で、酔っぱらって軽いキスをしてしまった場合と、二人きりでデートをしてディープキスをした場合とでは、全く違うというのは感情的にも理解できるところでしょう。

肉体関係がない場合、程度問題が大事になる、ということですね。

不貞行為

そもそも、法的に認められている「不貞行為」とはいったいどのようなものなのでしょうか。

不貞行為の定義とは、一般的には、婚姻関係、婚約関係、内縁関係にある人以外の異性と性交渉をすることをいいます。裁判所に浮気による不貞行為が認められれば、浮気相手とパートナーの双方に慰謝料を請求できます。

判例では、不貞行為を「配偶者のある者が、その自由意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」と定義しています。

ここでは、相手方の自由意思は問題になりません。
不貞行為に該当するかどうかは、ズバリ「異性と肉体関係があるかどうか」と言ってよいでしょう。

つまり、配偶者がある状態で、性交渉の風俗に行っても(勤務しても)不貞行為になるということですね。

宿泊

それでは肉体関係がないとしても、異性と宿泊した場合はどうでしょう。一般的に、配偶者が異性と宿泊したら「絶対に浮気をしている」という考えに至ることでしょう。

例えば異性の家に出入りしたという事実だけでは、慰謝料請求は難しいですが、下記の場合は肉体関係があると判断され、たとえ肉体関係が無かったとしても不貞行為が成立する可能性が高いです。

  • ラブホテルに入り、長時間滞在
  • 一人暮らしの異性の自宅に長時間滞在
  • 異性と2人で旅行に行き、同室で宿泊

また、仮に肉体関係がなかったと判断されたとしても、それ自体が婚姻関係の平穏を害する行為として、不法行為になる可能性もあります。

2章目:こんなケースでも慰謝料請求される?

1回限りの不貞行為は?

配偶者の不貞行為が1回限りであったとしても、「不貞行為」である以上、慰謝料請求の対象となります。

ただし不貞行為の回数・期間の項目に関しては、不貞行為の回数が多いほど精神的苦痛は大きいと判断されるため、不貞行為が1回限りの場合、複数回の場合より慰謝料は少なくなるケースがほとんどです。

5年前の不貞行為は?

慰謝料を請求することができる期間については、民法724条に規定があります。まず、被害者が、損害及び加害者を知った時から3年間慰謝料請求をしないときは、時効により消滅します。

つまり、5年前の不貞行為であっても、不倫された側(被害者)が不倫の事実を最近知った、または、不倫相手が誰だか分からなかったけれど最近分かった、という場合には、その事実を知った時から3年間は、相手(加害者)に対して慰謝料請求をすることが可能です。

加害者側としては、不貞行為が5年前だからといって、まだまだ安心はできないのです。

8年前の不貞行為は?

それでは、8年前またはそれ以上前の不貞行為は慰謝料請求の対象となるでしょうか。
不貞行為にもとづく損害賠償請求権の時効は下記の2点とされています。

  • 不貞行為の事実とその相手を知ってから3年が経過
  • 不貞行為があった時点から20年が経過

つまり5年前と同様、不貞行為があった時点から20年内であれば、事実を知った時から3年間は慰謝料の請求が可能となります。

★ ワンポイント
配偶者に対する請求は、10年前の不貞であっても、離婚したときから時効が進行するので、10年前だからといってあきらめる必要はありません。
ただし、10年前ということは、慰謝料の減額事由として考慮される可能性は十分にありえるでしょう。

3章目:証拠がない浮気・不倫でも慰謝料請求される?

相手が浮気・不倫を認めずに慰謝料の支払いを拒否した場合、証拠がなければ相手の言い逃れを追及することができません。

慰謝料請求の裁判においては、浮気の存在について、慰謝料を請求する側に立証責任があります。

ですから、慰謝料を獲得するには、やはり、相手方の浮気や不倫の事実を証明する証拠を集めることが重要なのです。

もし証拠が何もない場合は、その請求に根拠がないとみなされるため慰謝料を請求できない可能性が高まります。※もちろん、相手が認めていれば問題ありません。

浮気の証拠といえば、メールのやり取りや通話履歴と思われている方が多いと思いますが、実は、メールや通話履歴だけでは、証拠として不十分な場合が多いです。なぜなら、メールの内容だけでは、単なる言葉遊びと相手から主張されれば反論は難しいですし、通話履歴だけでは、二人の通話内容がわかりません。

そのため、確固たる「証拠」として認められるのは、性行為の場面を写した動画や写真、ホテルに出入りする写真やその目撃情報を記載した探偵の報告書などです。そのような証拠があれば、不貞行為があったと推測でき、慰謝料を請求するにあたり非常に有利に働きます。

慰謝料請求する際に有利になる証拠

  • 配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りする写真や動画
  • ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細、GPSアプリの追跡記録(ラブホテ・ルへ出入りした形跡)
  • 浮気現場の写真や撮影記録過
  • 配偶者の自白(浮気を認める発言を残した録音データ)
  • 浮気相手とのメールやLINEなどスマホでのやりとり、SNSの投稿内容など(「旅行」や「泊まり」など、肉体関係があることをうかがわせるワード) など

4章目:こんな場合でも慰謝料請求されるの?

慰謝料を請求されるまでに至る夫婦関係・不倫関係の態様は様々です。浮気の事実や証拠があるからといって、慰謝料が認められるとは必ずしも限りません。

不倫・不貞慰謝料請求が法律上成立しない場合とはどのような場合なのか、不倫慰謝料を請求された側がどのような反論をすることができるかなど、詳しく説明していきます。

相手は既婚者だけど夫婦関係は破綻していた!

不倫と相手方のパートナーの関係が「すでに破綻」していた場合、慰謝料請求は回避できます。慰謝料とは「不法行為によって受けた損害」について支払われるお金です。

不倫や浮気の場合、相手から受けた「心の損害」を償うため、損害賠償を支払うのですが、すでに相手の家庭が破綻していたのなら、相手方のパートナーが「不倫によって心の損害を負う」とは考えにくいです。
このため、夫婦関係が破綻していたことを証明すれば、慰謝料請求されたとしても、回避できる可能性があります。

具体的には次のようなものが、破綻に該当するものになります。

  • 長期間別居しており、交流がない
  • すでに離婚について合意しており、離婚に向けた話合いをしている

裁判所は、なかなか破綻の認定をすることに腰が重く、「円満とはいい難い」「破綻寸前であった」など、慰謝料減額の要素として考慮することが多いです。
そのため、セックスレスや、一時的な家庭不和だったとしても、すぐに破綻していると考えないことが重要です。

相手が既婚者だと知らなかった!

交際をしていた相手が、結婚指輪を外していたり、結婚生活・子どもの話をしていなかったりしたような場合には、相手が婚姻していること、つまり、既婚男性であることを知らなかったというケースがあり得ます。

このような場合には、不倫・不貞慰謝料の発生の根拠となる「故意」が認められず、不法行為が成立しない、つまり、不倫・不貞の慰謝料請求に法律上応じる必要がない場合があります。

嘘をついた相手に非はあるものの、知らなかったのにも関わらず相手側のパートナーから慰謝料を請求されるのは酷なことです。相手から騙されたことを証明できれば、慰謝料請求が回避できる割合が高いです。

ただし、あなたが本当に既婚者だと知らなかったことや、知らなかったことについて「過失」がないことを、慰謝料の請求者に対して主張したり証拠を出したりする必要があります。
法的には、請求する側が、既婚者だと知らなかったことについての過失を立証する必要があるのですが、裁判では、肉体関係をもってしまった相手の婚姻関係を確認しなかったことだけで、過失があると判断されてしまうこともあります。

逆に、既婚者だと気づきようがない事情がある場合は、過失が認定されず、慰謝料を払わなくてよくなるケースもあります。

独身とウソを付かれていた!

交際前に独身だと言われて信じて付き合い、付き合っている間も既婚者だと疑うような事実がなかったような状況です。最近では独身限定の出会い系アプリで知り合ったケースなどが該当します。

浮気・不倫相手が、「独身だ」とウソを付き、結婚していることを知らずに付き合っていて、その嘘を信じていた場合には、慰謝料を支払う必要は原則としてありません。

ただし前節のケース同様、証拠の提出が必要になるので専門家に相談するなどして判断を誤らないようにしましょう。

離婚が成立しているとウソを付かれていた!

交際相手に「離婚した」と聞いたから男女の関係になり付き合ったのに、彼の嫁と名乗る女性から突然慰謝料を請求されたというケースはどうでしょう。

離婚が成立していると信じており、そのことに過失がない場合、慰謝料の支払いを免れる可能性があります。

注意点
裁判で上記のような「知らなかった」、または「ウソを付かれていた」ことを立証するのは非常に難しいです。裁判所では、あなたが既婚者だと知っていたかが重要なのではなく、客観的に見て本当に既婚者だと知りえない状況だったかということで判断します。

既婚者だと知らずに交際していてトラブルに発展してしまったり、相手方の旦那・嫁に慰謝料を請求されたときは、男女問題の解決実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。あなたに過失が認められるかどうかは、様々な事情を考慮して、法律に基づいた見立てで判断すべきだからです。

状況に応じた最善の方法を見つけてくれるだけでなく、代理人として相手と交渉もらえます。騙されたことは今後の人生の糧として、専門家の力を借りながらスムーズな解決ができるように努力しましょう。

アプリや、メール、ラインの履歴などは、目につくと嫌な記憶がよみがえるので、アンインストールしてしまう方が多いのですが、裁判では非常に大事な証拠となる上に、復元も基本的にはできないものですので、絶対に消さないようにしましょう。
手紙や、日記、友達への愚痴のメールなども、意外な証拠となる場合もあります。

5章目:既婚者と浮気して嫁から慰謝料を請求されたら誰に相談すべき?

妻のいる男性と不倫していたら、ある日突然、嫁から慰謝料請求をされてしまった。
当然ですが穏やかな内容ではありませんので、受け取ったあなたはかなりの衝撃を受けることでしょう。 身に覚えのあることであればなおさらです。

一時的にパニックに陥ってしまう人も少なくありません。 しかし、この時点で相手は本気であなたと戦う意思表示をしていますので、あなたはそれに対処する必要があります。 対処法を考えるために、まずは落ち着いてください。初動を間違えずに適切な対応をすれば、職場や家族に言いふらされたり、いきなり訴えられたりするリスクを軽減することができます。

最初に考えなくてはならないことは、あなたが自分で対処できる問題なのかどうかということです。 戦いに勝てないと高額の金銭を支払わなければならなくなるので、精神的負担も大変なものです。一人で悩んでいると、あなたの仕事や家庭生活にまで支障をきたす恐れもあります。

不倫の慰謝料は法律問題ですから、弁護士に対応を依頼するという選択肢もあります。
特に、相手が弁護士を立てている場合は知識や戦略の面で圧倒的に不利になります。
あなたも弁護士に依頼すれば、ケースによっては慰謝料を支払わずに済んだ、あるいは大幅に減額することができる場合もあります。
弁護士には無料で相談できるところもありますので、まずは落ち着いて、弁護士に相談するかどうかを考えてみましょう。

6章目:慰謝料を減額する方法はあるの?

慰謝料を請求された場合に、慰謝料が減額する方法はいくつもあります。そのためにはまず不倫慰謝料の相場を確認することが重要です。
なぜなら、相手が示した慰謝料金額は、相手が一方的に請求してきたものであり、あなたに慰謝料を支払う責任があったとしても、妥当な金額かどうかはまだ決まっていないからです。

一般的に不倫慰謝料を請求される場合は、300万~500万円程度の請求となりますが、実際の相場としては50万~300万円程度になります。

そのため、請求に応じてすぐに支払う必要はまったくありませんし、高額な請求であれば減額交渉する余地は十分あります。

下記に当てはまる場合、減額または慰謝料を拒否できる可能性があります。

  • 肉体関係がない
  • 既婚者だと知らなかった、嘘をつかれていた
  • 無理矢理に肉体関係をもたされた
  • 不倫がばれてかなりの期間がたっている
  • 不倫関係の回数や期間が短い
  • 相手の婚姻関係が破綻していた
  • すでに嫁または旦那から慰謝料を受け取っている
  • 浮気を証明する根拠がない

ただし、条件に当てはまっていた場合でも、交渉が進まなかったり、適切な処理ができないと、あなたにとって不利な条件で合意してしまうこともあります。

最大限の減額をするためには、まずは法律、判例の知識や交渉テクニックを持っている弁護士に依頼しましょう。

7章目:浮気・不倫専門の弁護士に相談すべき理由とは?

慰謝料請求について、浮気・不倫専門の弁護士に依頼すべき理由は主に下記のものがあります。

  • 慰謝料を減額または免除できる可能性が高い
  • 精神的なストレスや、手続きや交渉にかかる手間を軽減できる
  • 適切なアドバイスを受けることができる
  • 依頼した方が、結果的に節約できるケースも

自分だけで減額や免除の交渉できないのか、と思われている方もいるかもしれませんが、実は自分だけで交渉することは非常に難しいです。なぜなら、交渉には法律の知識や判例の知識、不倫トラブルの交渉テクニックなどの専門的な知識が必要だからです。

解決のために自信で行動起こすとなると、相手方の弁護士の交渉や、調停・裁判などの手続きで膨大な時間を奪われます。専門的な知識が必要な場面も多く、心理的なストレスで大きな負荷がのしかかります。

弁護士があなたの代理人として浮気・不倫相手との交渉を全て行うことで、周囲にバレてしまうリスクも対策可能です。

弁護士に依頼すると弁護士費用がかかるため「弁護士に依頼しない方がお金をかけずに済むのでは?」と思われているかもしれません。

確かに弁護士に依頼すると、弁護士費用が発生します。

しかし、弁護士に依頼することで慰謝料を大幅に減額でき、その結果トータルで費用負担を減らせる場合もあるのです。

慰謝料問題をスムーズに解決するためには、浮気・不倫に強い弁護士に依頼し、適切な対処法をとることが大切です。

8章目:まとめ

慰謝料請求されるラインは基本的には「肉体関係の有無」です。肉体関係がなければ不貞行為には該当せず、原則的に慰謝料請求は認められません。

ただし、例外的に不貞行為なしでも慰謝料請求が認められることや、合った場合にも免除または減額できる場合がありますので、トラブルが深刻化しないうちに、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

横浜クレヨン法律事務所では・・・

浮気・慰謝料問題への対応に非常に力を入れています。慰謝料を請求されても、免除または減額できたケースも数多く取り扱ってきました。

慰謝料問題に不安がある方、弁護士が親身になってサポートいたします。LINEを始めとした各種の無料相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

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